-　ちょっと言いたくなる京都通　-　3/15号　【伊藤久右衛門】

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ご愛読誠にありがとうございます。
伊藤久右衛門の野上です。

京都市の中心にある緑豊かな京都御苑。

その中にある「京都御所」はかつて天皇のお住まいとして、明治時代まで使われていました。

昔は一般人が立ち入ることは決して許されていませんでしたが、
今では春と秋の年2回一般に公開され、大勢の観光客で賑わいます。

2014年の春の一般公開ももうすぐ始まります。

今回は、見学コースに沿って
『京都御所』の魅力をご紹介していきます。

築地（ついじ）と呼ばれる高い塀に囲まれた京都御所。

ここは東京に遷都されるまでは歴代の天皇のお住まい（内裏）で、周囲には貴族の邸宅がたくさんありました。

延暦13年（794年）、桓武天皇が平安京へ遷都した当時の内裏は御所の西方、現在の二条城の近くにありました。

しかし、火事で焼失・再建を繰り返し、さらには貴族の邸宅を仮住まいにした後、鎌倉時代後期の元弘元年（1331年）、光厳天皇がここで即位されて以来、御所とされたのです。

以降、明治に至るまでの約500年間、天皇の住まいとなりました。

ただ、建物自体はその間、何度も全焼したため、鎌倉時代の建物は一つも残っていません。

現在の建物は安政2年（1855年）、平安時代の内裏の姿にならい、徳川幕府によって再建されたものです。

今の建物では明治天皇と孝明天皇が実際に暮らしていました。

京都御所は春と秋の年2回、一般公開されるほか、事前に申請すれば随時見学ができます。

見学できるのは御所の中心的な建物である紫宸殿（ししんでん）をはじめ、清涼殿、小御所、御学問所、御常御殿（おつねごてん）、諸大夫の間（しょだいぶのま）、お庭など。

建物内部に入ることはできませんが、約1時間かけて職員の方が説明しながら案内してくださいます。

また、写真撮影も自由にできます。

最初に案内されるのは丸い屋根をした「御車寄（おくるまよせ）」です。

別名・公家門と呼ばれる宜秋門（ぎしゅうもん）をくぐった公家たちは、まず牛車をここに止めて建物に入りました。

そして天皇に謁見（えっけん）するまで、「諸大夫の間」で控えるのですが、この部屋は身分によって3つの部屋に分かれています。

最も格式の高い「公卿の間」、諸侯や所司代が控える「殿上人の間」、それ以外の者の「諸大夫の間」。

それぞれの部屋のふすま絵から、「虎の間」「鶴の間」「桜の間」とも呼ばれていました。

「紫宸殿（ししんでん）」は天皇に排する朝賀の式や即位式などが行われた最も重要な正殿です。

この紫宸殿で即位をされたのは大正天皇と昭和天皇です。

今の天皇の即位式は東京の皇居で行われましたが、その際、この紫宸殿の母屋中央にある「高御座（たかみくら）」が用いられました。

高御座は奈良時代以降、即位式に天皇の御座として用いられてきた調度品で、高さが6．5mあるため、解体して皇居までヘリコプターで運ばれました。

紫宸殿の前には、左右に一本ずつ木があります。

向かって左が「右近の橘」、右を「左近の桜」といって、おひな様に使われている木と同じ木です。

左右が逆で混乱しがちですが、これは高御座にお座りになった天皇の視点から名付けられています。

紫宸殿のすぐ北側にあるのが「清涼殿」。

平安時代は天皇の日常生活の間として使われ、江戸時代になると、儀式や公務の場として利用されるようになりました。

江戸時代後期に火事で焼けて再建する際、清涼殿と紫宸殿だけは、平安時代の絵巻物などを参考にそっくり再現されています。

紫宸殿と並び、清涼殿は寝殿造り。

京都の夏を涼しく過ごすために、東に面して建てられています。

畳敷きの部屋がなく、すべて板張りになっており、さらには天井がむき出しで屋根裏が見えます。

夏は快適ですが、冬は相当寒かったのではと想像できます。

また、今でいう雨戸の役割を果たす「蔀度（しとみど）」ですが、昔は晩になると閉めていました。

約80キロの重さがあるため、現在は台風の時以外、年中開けっ放しになっています。

中の様子はのれん越しにうっすらとしか見えませんが、かなり広く、間仕切りした部屋が多数あるようです。

続いて小御所、御学問所に向かいます。

「小御所」は皇太子に関する儀式や、将軍・諸大名の謁見の場として使用され、「御学問所」は学問の場として使われたほか、月次の和歌の会などが行われました。

清涼殿などの寝殿造りに比べ、書院造の建物は格段に居住性が良くなっています。

実はこの小御所は昭和29年に、鴨川で行われた花火大会の火が移り、焼失しました。

現在の建物は昭和33年に再建されたものです。

この建物の前には大きな「御池庭」が広がります。

池のどこから見ても正面になるように設計された、池泉回遊式庭園となっています。

明治天皇がお住まいになっていた頃はこの池はもっと広く、舟遊びなども楽しまれていたようです。

この北側には、御池庭よりも少し小さい「御内庭」があります。

細部にまでこだわり、見る角度によって雰囲気ががらりと変わるのが特徴で、秋には紅葉が楽しめます。

また、お庭の向こうには、地震の際の避難所となる「地震殿」や、「錦台（きんたい）」というお茶室もあります。

この御内庭の前にあるのが、御所の中で一番大きな「御常御殿（おつねごてん）」で、室町時代からは天皇のお住まいとして使われていました。

御常御殿の西にある「御三間（おみま）」では、涅槃会（ねはんえ）や七夕などの年中行事が執り行われました。

障壁画もそれにふさわしく、平安時代の儀式や祭礼の風俗が描かれています。

そこを過ぎると、かつて御台所があった場所に出ます。

ちょうど御所の真ん中に立つことになり、周囲に御殿を見渡せ、春の開花時期にはしだれ桜が美しく彩ります。

そんな自然あふれる中で、日本の宮廷文化を感じてみてはいかがでしょうか。

※平成26年度春の一般公開は4月9日（水）から13日（日）まで。
期間中はテーマに沿った展示物も特別公開されます。

今日もちょっと京都通。

では、次回もよろしくお願いします。

取材協力：京都御所
京都市上京区京都御苑内
電話番号：（075）211−1211

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