-　ちょっと言いたくなる京都通　-　10/18号　【伊藤久右衛門】

-------------------------------------
このメルマガでは奥深い京都の良さや、
京都の人も知らない情報を
わかりやすく紐解いていきます。
ぜひ身近に京都を感じてください。
-------------------------------------

ご愛読誠にありがとうございます。
伊藤久右衛門の野上です。

近頃、宇治の街は爽やかでやわらかな秋の陽気につつまれ、
宇治橋を歩けば、気持ちの良い風が通り過ぎます。

宇治川ではこの季節、恒例の「宇治川舟茶席」が行われています。

宇治川を上り下りする屋形船の上で、もみじ舞う景色を楽しみながら、
茶どころ・宇治の「おうす」（抹茶）をひとくち。

まだ少し紅葉には早いですが、あと半月もすれば、
宇治の街も赤く染まり始めます。

風流な舟の上で、優雅に紅葉狩りはいかがでしょうか？

さて、今回の京都通は、「長岡天満宮」をご紹介します。

大阪と京都市内を結ぶ交通の要所で、タケノコの名産地としても知られる長岡京市。

京都市の南西に位置するこの長岡京市について、少しお話ししておきましょう。

その市名の由来となったのは、延暦3年（784年）に「長岡京」という都が築かれたことから。

桓武（かんむ）天皇によって平城京から都が移されたものの、長岡京に都があったのはたった10年間です。

その後、平安京に都が移されてしまったのはなぜなのでしょうか。

それは延暦4年(785年)に、都の造営長官だった藤原種継（たねつぐ）が暗殺されたことに始まります。

その暗殺に、桓武天皇の実弟である早良（さわら）親王が関与した罪で捕らわれ、乙訓寺に幽閉されました。

潔白を主張して絶食を続けますが、認められず、早良親王は淡路島への島流しの途中で亡くなります。

その後、大洪水や天皇の近親者に不幸が相次ぐと、それは早良親王の怨念によるものと恐れられました。

桓武天皇は長岡京廃都を決意し、延暦13年(794年）に都は平安京に移されることとなったのです。

前置きが長くなりましたが、その長岡京のあった西南の外れに、今回ご紹介する「長岡天満宮」はあります。

北野天満宮や大宰府天満宮と同じく、菅原道真公を祭神とする神社です。

かつてここは菅原家の所有する領地でした。

延喜元年(901年)に、道真が九州の太宰府へ左遷された時、都との別れを名残り惜しみ、この地に立ち寄って「我が魂、長くこの地にとどまるべし」と詠んだと伝わっています。

これにちなんで、道真公ご自作の木像を祀ったのが、長岡天満宮の始まりなのだそう。

入り口正面には、平成14年の菅公御神忌1100年大萬燈祭で奉納された、石の大鳥居が参拝者を出迎えます。

また、本殿は京都平安神宮の社殿が移築されているのもひとつの見どころとなっています。

江戸時代の元和3年(1617年)には、社寺を含めたこの一帯が八条宮家（はちじょうのみやけ）の領地となり、天満宮の維持に力を入れ、境内は整備されていきました。

寛永15年(1638年)には、初代智仁親王により、境内の東に農業用水として池を造営。

ちなみに教養と風雅にあふれる智仁親王は、桂離宮を造営したことでも知られる人物で、この池を「八条ケ池」を呼ぶのももちろん、八条宮家に由来します。

豊かな池を横切る中堤は参道となっており、迷路のような水上橋を進んでいくと、六角舎があります。

池の上に浮かぶ六角舎は休憩所になっているので、揺れる水面を眺めながら、ゆったりとした雅な時間が過ごせます。

長岡天満宮と聞くと、参道の両側に咲き誇る「キリシマツツジ」を思い浮かべる方も多いでしょう。

およそ200本のキリシマツツジが植えられており、その樹齢は150年以上ともいわれています。

高さが約3メートルもあるのが特徴で、60メートルにわたる参道を真紅に染める姿は、まさしく花の回廊。

その壮大さは我が国随一と称され、長岡京市の天然記念物に指定されています。

4月下旬には「春の観光祭り」が行われ、満開のキリシマツツジを求めて全国から訪れる観光客で賑わいます。

そのほか、八条ケ池の東側に立ち並ぶ桜並木も圧巻です。

そして5月から7月は、池の北西側にある「カキツバタ園」にアヤメやカキツバタ、蓮や睡蓮などの水生植物が美しい花を咲かせます。

そんな花の名所にちなんで、長岡天満宮では「花おみくじ」が運勢を占ってくれます。

和歌が書かれたおみくじで、ほのかな香り付き。

しおりとしても使えるので、参拝後も優雅な気分が持続することでしょう。

菅原道真といえば、その邸宅が紅梅殿・白梅殿と呼ばれたように、梅をこよなく愛した人物として知られています。

ここ長岡天満宮にも“さくら梅”や“ゆうこう梅”など多種類の梅が咲き誇る梅苑があり、早春には訪れる人の目を楽しませます。

この梅苑、小高い丘の上にあるので、周りの建物の存在が感じられず、空を突き抜けた清々しい感覚が味わえます。

そんな特別な空間で、梅の香りを楽しむのは至福のひと時。

ここで収穫された梅は、年末に福梅として授与されるほか、3月中旬には「梅花祭」が行われ、お茶席も設けられます。

また、これからの季節ですと紅葉も楽しんでいただけます。

境内中央の「紅葉庭園　錦景苑」では、滝を覆うように大小の紅葉が錦を織り成し、期間限定でライトアップもされます。

その庭園の中ほどに、大きな石橋が架けられた通称「弁天池」があり、池のほとりには笠松地蔵が祀られています。

実はお地蔵さん、昭和49年に池を改修した際に池の底から発見されたもの。

その後、昭和52年にもさらに一体が発見され、祠には二体のお地蔵さんが祀られています。

同じ池から二体のお地蔵さんが発見されるのは大変珍しいこと。

ほかにも池の畔には季節のお料理が楽しめる、明治14年創業の料亭「錦水亭」があり、春先にはタケノコづくしのコースが味わえるのだそう。

さらに、トルコ料理のお店も境内にあり、神社とのミスマッチ感がかえって新鮮に感じられます。

季節の花々やお食事が同時に楽しめるなんて、女性にとっては嬉しい限り。

京都市内から電車で10数分ですので、気軽に足をのばしてみてはいかがでしょう。

今日もちょっと京都通。

では、次回もよろしくお願いします。

取材協力：長岡天満宮
京都府長岡京市天神2丁目15―13
電話番号：（075）951−1025

	●配信停止はこちらのページからお願いします。
	●アドレス変更は、こちらのページからお願いします。

- ちょっと言いたくなる京都通 - 10/18号 【伊藤久右衛門】

　-　ちょっと言いたくなる京都通　-　10/18号　【伊藤久右衛門】